どうにも乗り越えられない障害にぶつかった時は、
頑固さほど役に立たないものはない。
今回は、フランスの作家・哲学者、ボーヴォワールの言葉です。
『One is not born, but rather becomes, a woman. 人は女に生まれるのではない、女になるのだ』 で、有名なボーヴォワール(1908-1986)。 |
彼女は、同じく哲学者・小説家のサルトルと契約結婚という、今でいう事実婚で結ばれていたのも有名な話です。
フランスは昔から、結婚に関しては様々な形態がありますが、型にとらわれず個人責任で自分の気持ち正直に生きるという文化がありますよね。
ママ友4人でスタートした「ファミリア」
さて、昨年のNHK朝の連ドラ「べっぴんさん」を覚えていらっしゃるでしょうか。 今回は、そのモデルとなった「株式会社ファミリア」の社長、岡崎忠彦氏の講演を聞く機会がありました。 ファミリアと言えば、小熊のイラストでおなじみの高級子供服。 子供も大きくなった今私が学生の頃、元町に遊びに行くとファミリアの素敵なお店があったことを思い出しながら、講演を伺いました。 40代の氏は、ファミリア創業者の孫息子です。 ご自身はデザイン関係の仕事をされていたところ、父親の急逝により後を継ぐことになり、2011年に社長就任しました。 そのいでたちは、社長というよりデザイナー、 という風貌です。 |
今年67年を迎えるという同社の創業の背景は戦争です。
社長が言うには、「ママ友4人でスタートしたベンチャー」。
モノがない時代、子供のための服を自分たちの子供で試しながら試行錯誤し、そのうちそれが認められるようになり、ひいては現在の皇后美智子さまがご懐妊された時に衣類や家具を収めるまでに成長していきます。
しかし、バブル崩壊後の90年代半ばより、その業績に陰りが見え始めたそうです。 停滞が続き、社員にボーナスが払えない状況におちりいました。そんな中、外から社長として迎えられ、「社員にしたら、一番嫌なパターンですよね」と。 ただ、ご自身が外から来たからこそ見えるものも多かったと言います。 良くも悪くも企業として継続していると、「らしさ」が独り歩きし、本来なら共通言語であるはずのものが社員ごとに違っていたり、部門ばかり多かったり、教育、出張費がカットされていたり。 |
新たなテーマ「オープンオフィス」
そこで、社長に就任し、決めたことが「開き直る」「フォロワーをつくる」「客観的になる」ということだったそう。
例えば経営の視覚化。サッカーがなぜあんなに盛り上がるのかというと、皆がルールを知っているから。
だとしたら、会社も同じで皆でルールを共有すること。
約40あった部署も2つに集約。教育の復活。
特に同社では課長職クラスの中堅社員の育成に力を注いでいるとのことで、そうしているうちに、研修の中から共通言語ができ、社員から提案が出るようになり、結果皆の顔が活き活きとしてきたそうです。
また、本社を売却し(歴史的建造物ですが、売却後も景観は維持されています)新たにオフィスを作ったそうです。
その時のテーマが「オープンオフィス」。
これは「オープンキッチン」からの発想で、社長室や部長室もなし、仕切りも壁もなし。
ランチを皆で食べる日を設けたり、いつでも見学OKとのこと。
今回、社長はこれらをさらりと語っていらっしゃいましたが、デザイナーとして好きな道で軌道に乗っている頃に、斜陽のアパレル、しかも子供服の会社に、社長として入られるのは本当に勇気がいったことと思います。
しかしそこで発揮されたのは固くなっていた組織や人を楽しませ、そして重要施策を決めたこと。
伝統は大事にしつつもとらわれず、現在はプレスクール事業や海外展開も図っています。
頑固だった組織に、経験はなくとも良い社長を迎えられたことで、社員もそして、創業されたおばあさまたちも喜んでいるのではないでしょうか。
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さて、今回取り上げた
「どうにも乗り越えられない障害にぶつかった時は、頑固さほど役に立たないものはない。」
岡崎社長は、「うちはもともとママ友4名でスタートした会社なんだから、ゆくゆくの経営陣は女性でいいと思っている。男性はアウトソースでいいんじゃないかな。」と、おっしゃっていましたが、67年前と今、どんどん新しいものが出てきて、価値観も環境も、コミュニケーションツールも変わってきているなか、女性の持つ良い意味での柔軟性やまじめさが改めて評価される時代になっていると思います。振り返ってみて、自分はそして自社は不要な頑固さがはびこっていませんでしょうか。柔軟な発想を持ち、社員さんが働きやすい環境を作って行きましょう。
(弊社発行 月刊まるやまVoice Vol.75 2017年9月号より抜粋)