取捨選択(しゅしゃせんたく)」 多くのものの中から、より良いもの、必要なものを選び
他は捨て去ること。今回の四字熟語はごく普通につかわれるフレーズです。
企業戦略でいえば「集中と選択」ということだと思います。

 

先日「スーパーホテル」の創業者であり、現会長の「山本梁介」氏の話を聞く機会がありました、私は出張時のビジネスホテルは「ダイワロイネット」を利用することが多く、もちろん満足しているのですが、サービス産業生産性協議会が指標としているJCSI(日本版顧客満足度指数)でビジネスホテル分野では「スーパーホテル」が1位だというのを知り興味深く思っていました。そこでの話が、まさに「取捨選択」だったのです。以下簡単にご紹介します。

山本会長は慶応大学を卒業後、家業の繊維業を継がれて、経営論を学び、色々な戦略を打ったそうです。
しかし若さと経験不足が要因で事業を売却することになった、その要因を後になって考えれば、社員がついてきてくれなかったと、生産性の向上の追求や改善は今でも間違っていなかったと思うが、やり方や態度が傲慢だった、つまりリーダーとして失格だったと。
そこで、事業に成功している社長を観察してみると、成功する人は感性が豊かで、人間力にもあふれている。それなら、自分も人間的に優れている人にならなければと決意し、再度勉強をする中で、マンション事業をはじめその後縁があり、ビジネスホテルの経営をスタートすることになった。
 「人間力を高める、良い縁に感謝する」ことで、この事業に出会えたから、今でも同社は、感性が高まる、人間力があがる、ということを社員教育のテーマにして、会長の時間の半分はこの部分に費やしているそうです。

さて、ビジネスホテルを経営するに当たり、他のホテルとの差別化をどうするかで、頭を
悩ませたそうですが、まず安全と清潔は外せない、その次は何かと考えた時に快眠に
たどり着きました。ビジネスホテルを利用するお客様は、多くが午後10時にチェックイン
して、翌日8時にチェックアウトをする。つまり10時間ご利用いただくうち、7~8割は
眠っている。それならば、安全・清潔・快眠の3点にお金をかけて、それ以外は大胆に
切り捨てようと。つまり「取捨選択」をしたわけですね。
                   

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「ぐっすり眠れる」ための取り組みは、枕とベットの固さを選べる。空調や照明も最適の追求。窓は勿論二重サッシ、ドアの外の足音が聞こえにくい、遮音対策など、一流ホテル並みの快適さを提供しているそうです。
会長曰く、乱暴な言い方だけど、一流ホテルも、ビジネスホテルもベッドに入って電気を消せば真っ暗になる。そうなると体が感じるのは枕とベッドになるからそこがポイントだ。 
←山本梁介会長

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それ以外にも同ホテルの、「取捨選択」はたくさんあります。
眠りにこだわる一方で、チェックイン・チェクアウトの混雑解消のため、IT投資を惜しまず、自動化をする。客室の電話、冷蔵庫の有料飲料など「100人のお客様が来て1人しか困らない」ようなサービスはどんどん捨てる。結果として「よく眠れて」「安い」というビジネスマンのツボを押さえることに特化していきました。
またITの導入で、お客様の履歴がわかり、フロントのスタッフが、お名前でお呼びする、前回の宿泊の(他のホテルでも)お礼をする。お部屋と枕の好みを事前用意するというおもてなしの向上につなげています。

最後に、カンブリア宮殿に出演した時の、村上龍氏のコメントをご紹介します。
「選択と集中」は流行語と化したが、ターゲットとする客層とサービスを絞り込むのは簡単ではない。選択とは、あれもこれもと選ぶのではなく、不要だと判断したものを切り捨てる事だ。スーパーホテルは、団体客への依存と、不要なサービスを勇気を持ってそぎ落とすことで、本当にスーパーな存在になった。必要不可欠なサービスを徹底し、個人のリピーターを獲得しなければ、これからはどんなサービス業を生き残れない。

我々も、自社のサービスと賞品を「取捨選択」し、スーパーな存在を目指そうではありませんか。

 

 

(弊社発行 月刊まるやまVoice Vol.47 2014年9月号より抜粋)