「意先筆後(いせんひつご)」 書を作るに当たっては、まずその作品についての意図・構想を明確にさせてから書くべきである。
キチンとしたものを作るには、事前に構想を明らかにしてからやるべきだということですね。

 

 さて「意先筆後」。古代中国で言われていたように、書を作る際に、(これは芸術作品を創ることだと思います)自分はいったいどんなことを表現し、何を伝えたいのかというゴールイメージを決めたうえで、制作することが大切だと。これがわかっていればこその良い作品ができたでしょうし、なければ逆に大作は無かった事でしょう。
その意味でいうと、「意先筆後」とはまさに会社経営そのものではないでしょうか。
私も仕事柄多くの経営者とお会いしますし、経営計画書もたくさん拝見いたします。そして経営戦略・営業戦略の立案や実践もサポートさせていただいております。そこで確信できるのは、リーダーに明確なビジョンがあるかどうかで、成果は全く違ってくるということです。
業績が良い(つまりお客様に選ばれている)企業の経営者やリーダーは、常に、この活動は、このサービスはだれが望んでいるのか、それを提供することはお客様にとってどのような価値が得られるのか。それを考えているからこそ、お客様から選ばれ、他社との差別化ができているのだと思います。

 以前ある勉強会に参加した時に講師がこんな質問をしました。
「みなさんの会社がもしなくなったら、誰が困りますか?そしてそれは具体的にはどのように困りますか?」
 この質問は、自社が提供するサービスが、どんな価値を持っていて、だれから評価されているか、ということですよね。
 経営計画書を作る段階になると、ついつい戦略を立てるという言葉に倣い、自社が自分がという側面が出てしまいますが、本来であれば、お客様の悩みを解決するサービスをどの様に提供するかという視点にたたないと意味がないということになります。
 なぜなら、お客様に貢献し、愛される企業が、結果として存続するわけですから。

 

201507

↑樹研工業  松浦社長

最近お客様と話す中で、改めて人材育成の大切さを痛感しています。
今の時代、特に会社の提供する商品やサービスに圧倒的な違いが無い限り、比較されるのは、当然「人」となります。社員さんに良い対応をしなさい、笑顔で接客しなさいと言っても、自分が上司から同様の対応をされていなければ無理な話ですよね。
人づくりと言えば、「樹研工業」の松浦元男社長の考え方に共感します。
「社員の可能性を引出すのは簡単、この仕事の意味や価値を、きちんと伝えること」「雇用を保証して、能力を発揮してもらうこと」「夢と希望を持って働ける環境をつくること」「リストラで業績回復なんて最低だ、経営者の都合で言ってみれば粉飾決算ですよ。リストラされた社員は決してその会社の製品を買わないし、ファンでなくなりますから、結果としてお客様は減り、売上は落ちていく事になりますよ」
「社員が活き活きと働いてくれる環境を作るのが社長の仕事、不満がある社員が能力を発揮してくれるわけはない」「サービスを開発するのも、提供するのも全て人、やりがいを持って働いてもらうかだけです」等々、おっしゃる通りだと思います。

 

今回は、「意先筆後」から、「ビジョンの大切さ」「人づくりの大切さ」をお伝えしました。お客様からみて、どんな会社になりたいのか、ならなければいけないのか、そしてそれを実現する人をどう育て、どう働いてもらえれば良いのか。

 最近ある経営者からこんなことを言われました。「丸山さん、我々アマチュアゴルファーは、ティショットをどこに打つか、それを考えて、その次、その次と考えるよね。でもプロは違う、バーディを取るには、第三打目はグリーンのここに落とす、そうすると、第二はフェアウエイのどこ、だからティショットはあそこに打つ。逆算しているらしいよ。経営もそうだよね。
 我々は経営のプロとして、どんなお客様から選ばれたいと考えることからスタートすれば、打つ手が自然と出てくるはずだし、そうならないとだめだよね。だからそうやって行きましょうよ」と。その通りだと思います。
改めて、お客様の笑顔を想像し、社員の笑顔を考え、取るべき手段を選んで行こうではありませんか!

 

(弊社発行 月刊まるやまVoice Vol.54  2015年7月号より抜粋)