「万里一空」=世界はどこまでいっても空はひとつ、世界は繋がっている、の意味。そこから転じて、「世間に惑わされず、ひとつの目標に向かって精進する」という使い方が一般的ですね。 今回琴奨菊関が大関昇進の伝達式での口上に使われたので、取り上げました。これは剣豪と言われた宮本武蔵が書した兵法書「五輪書(ごりんのしょ)」に出てくる言葉です。  

さて、「万里一空」 世間のいろいろなことに惑わされず、その道を貫くことは大切だと分かっていても、誘惑もあれば、雑念もあり、また会社経営上の様々な悩みもありますよね。それを克服して、いかに集中して事に望むか、これが世に名を残す人なのだと思います。  df3cfb8836380825ad7311aac53d2b05

 

20140821  賢者と言われている人にはエピソードは多いですが、その中でも幕末の思想家・教育者である吉田松陰氏の話が飛びぬけて凄いので、私は自分の集中力が途切れたときには思い出して気合を入れなおします。ご存知のように、吉田松陰氏の人生はわずか30年に過ぎません。それにもかかわらず、膨大な書簡や著書を著し、自身が学んだ有名な松下村塾を初めとする私塾で、人材育成に取り組み、多くの人に影響を与えました。彼はとにかく今の受験生でもありえないくらいの猛烈な思いで勉学に取り組みました。 まさに、「万里一空」 。 わき目も降らずに、一心不乱とはこのことだと思います。

氏が江戸に来てからの生活を記した日記「辛亥日記」によると、午前中は乗馬と剣術の訓練を行い、ひと月に30回の勉強会に参加し、中国の歴史書「資治通鑑」(しじつがん)を30枚ほど読む日々であったそうです。 また、一年に千冊を読破するという目標を掲げ、それを実践できなかった(600冊にとどまった)自身の不甲斐なさを日記に繰り返し書いて自分を責めています。そんな氏は18歳で「寡欲録」(かよくろく)という自分の欲を戒めるための決意表明文も書いています。

それによると、・・・・『「孟子いわく、心を修行するには欲望を少なくするのが一番良い方法である」と。故に私は欲望の罪に嵌ってしまい後悔することのないように、決意文書いておこうと思う。なぜ欲望の罪にはまってしまうのかと言うと、これぐらいは許されるといういい加減な気持ちを持つからである。自分の本分・本業・本職につくしてこそ世の中の役に立つのである。武士にあって本分とは、作詩や作画ではなく、また武力を振り回すことでもなく、自分の命をそして主君に仕えることだけを思い願うことである。』 と、世に名前を残す人の凄さを感じます。

松下村塾→

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さて、お伊勢参りの日程は、名古屋でのセミナー受講に合わせました。メインスピーカーは 「実践するドラッカー」 の著者である。佐藤等氏。彼は友人と始めた輪読会でドラッカーを学んだときに、ドラッカーの教えの素晴らしさに感激し毎日ドラッカーの著書から学んだことをことをブログに書こうと決め、8年続いている現在、解説本を3冊書く機会に恵まれたのです。 そしてドラッカーの夫人であるドリスさんから、「日本の伝道師」と呼ばれ、“ぜひ多くの人にピーターの教えを伝えて下さい”と、直々に言われたというエピソードなど、ドラッガリアン1号らしく、楽しめたセミナーでした。 まさに、「万里一空」 一つのことに集中する素晴らしさ凄さを目の当たりにしました。  201408212

(弊社発行 月刊まるやまVoice Vol.15 2011年9月号より抜粋)