外柔内剛(がいじゅうないごう)」外見は穏やかでやさしそうだが、心の中は何事にも左右されない強い意志を持っていること。対義語の内柔外剛はネガティブな印象ですがこちらは、頼もしい人材を表わしていると思います。出典は中国の古典「晋書」です。

 

さて「外柔内剛」。こんなリーダーがいれば頼もしいですし、魅力的ですよね。そんなリーダーがいる組織が、良い組織だろうと思いますし、強い連帯感が生まれるのではないでしょうか。皆様の会社は如何でしょう、そんな頼りになる人物は何人いらっしゃるでしょうか?もちろん皆様ご自身はきっと誰もが尊敬する「外柔内剛」な人物だろうと思います。

 

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今回のVoiceで取り上げるのは、新渡戸稲造とならんで、西洋の人々に日本と日本人の素晴らしさを紹介した、内村鑑三です。維新後、一気に欧米の文化が入ってきました。当時日本とタイ以外のアジア諸国は、文化レベルが劣っており、列強の植民地にされていた時代です。そんななか欧米の知識人たちは、「日本はどうも違うらしい。識字率も高く、文化レベルも高い。加えて平和で奴隷もいない社会が何百年も続いている」と。それをわずかな情報で知ってはいましたが、そうはいっても本当に、東洋の小さな島国にそんなことがあるのかと、今のように簡単に行き来できる時代ではありませんから、信じていなかったのが本当のところだと思います。そんななか、札幌農学校で同時期に学んだ二人が、日本人の素晴らしさを英語で書いた2冊の本が多くの欧米人に影響を与えました。

一つは新渡戸稲造の「BUSHIDO:The Soul of Japan」(武士道)

 そしてもう一つが内村鑑三の「Representative Men of Japan」(代表的日本人)です。

 ↑内村鑑三と著書↓  

 utimura2  特に、代表的日本人で取り上げられている日本人は5人ですが、軍人や政治家として圧倒的な勝者を取り上げるのではなく、様々な分野からバラエティに富んで選んでいることが素晴らしいと思います。

ここで取りあげられている5人は、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人です。これらの人物はみな困難に打ち勝ち成果をあげた「外柔内剛」な人物だったのでは、ないでしょうか。内村鑑三はクリスチャンとしても有名ですが、この本の狙いは、欧米のキリスト教徒に対して「異教徒の国・日本にも、開国以前から質の高い思想があり、尊敬すべき人生をおくった人々がいた」というメッセージを伝える事だったと思います。この本の影響は素晴らしく、欧米から日本の歴史を学びたいという著名人が沢山来日してきます。アインシュタインもその一人です。そして、ケネディ大統領をはじめ、複数のアメリカ大統領が日本の尊敬する政治家として「上杉鷹山」を取り上げているのは、皆様ご存知の通りです。  

今から100年も前に、欧米人にしっかりと日本の素晴らしさを伝えた、志ある人がいたことを私は大変誇りに思います。

内村鑑三のエピソードといえば、軽井沢での星野旅館経営者、星野嘉助との交流の中で書き記した「成功の秘訣」も有名ですね。 これは、今でも星野リゾートに掲げられています。紹介いたします。10項目ですが素晴らしい内容です。

 

一.自己に頼るべし、他人に頼るべからず。

一.本を固うすべし、然らば事業は自づから発展すべし。

一.急ぐべからず、自働車の如きも成るべく徐行すべし。

一.成功本位の米国主義に倣ふべからず。誠実本位の日本主義に則るべし。

一.濫費は罪悪なりと知るべし。

一.能く天の命に聴いて行ふべし。自から己が運命を作らんと欲すべからず。

一.雇人は兄弟と思ふべし。客人は家族として扱ふべし。

一.誠実に由りて得たる信用は最大の財産なりと知るべし。

一.清潔、整頓、堅実を主とすべし。 

一.人もし全世界を得るとも其霊魂を失はば何の益あらんや。人生の目的は金銭を得るに非ず。品性を完成するにあり。 

大正十五年七月二十八日、星野温泉若主人のために書す。 六十六翁 内村鑑三

 

(弊社発行 月刊まるやまVoice Vol.42 2014年4月号より抜粋)