皆様も日々活字に触れられていると思いますが、日本人は人口当たりの本の購買数が世界で一番といわれているように、活字好き、読書好きだそうです。 ちなみに日本で一番売れた作家は司馬遼太郎さんで、単行本・文庫本合わせて1億3千万部を超えているそうです。日本人全員が1冊は読んだ計算になりますね。 10人に1人くらいが読書をするとすれば、1人10冊読んでいるというイメージでしょうか。 では、実際の読者人口というのはどのくらいでしょうか?
調べてみると、文芸評論家の斎藤美奈子さんが『趣味は読書』でおもしろい推算をしています。 毎日新聞社の『読書世論調査』(2002年度)によると、18歳以上の人で「雑誌・マンガを除く本を読む」と答えた人は59パーセントだったという。ただし、読んでいる本の種類は、趣味・スポーツ関係が1位で、2位は健康・医療・福祉関係、3位に日本の小説が入っているものの、4位は育児・料理・生活と続き、実用書が大半を占めている。これはいわゆる「読書」とはちょっとちがうかもと・・・ |
また、読売新聞の読書世論調査(2004年度)によると、「最近1ヶ月のあいだに本を読みましたか」という質問に「はい」と答えた人の割合は50パーセントで、1冊読んだ人が17パーセント、2冊が15パーセント、3冊以上が18パーセントという結果が出ている。ただし、これも「本の種類は問わず」という調査だから、読んだ本の大部分は実用書だろう。そして、NHKの国民生活時間調査(2004年度)によると、1日のうちに習慣的に本を読む時間を持っている人は12パーセントという結果が出ている。調査対象全体でならして平均すると、1日に本を読む時間はわずか9分にすぎない。テレビの平均視聴時間の4時間7分との差は歴然としている。 このようなデータから斎藤さんは、実用書まで含めて習慣的に本を読む読書人口は国民のおよそ一割程度であり、自分で本屋に足を運んで、実用書以外の本を買って読む「純粋な趣味としての読書人口」は、せいぜい500万人から600万人程度ではないかと結論しています。毎日洪水にように新刊書が出版される現状を見ると信じがたい数字のようにも思えますが、確かに納得する数字だとも思います。毎日のように本を読んでいる読書好きは、今の日本においては圧倒的な少数派なのかも知れません。
ところで最近読んだ中で、面白い本がありましたのでご紹介。京都大学の教授でもある東郷雄二さんの「打たれ強くなるための読書術」です。氏は最近の傾向として、教育も情報も正解を見つけるだけになってしまい、結果、学生ばかりでななく、大人も物を深く考えない、そして本も簡単なハウツー本ばかりが売れることに危機感を感じてこの本を書いたそうです。 東郷氏が説く、「知的に打たれ強い」というのはどういうことかというと、いろいろなことについて知識を豊富に持っていて、議論で常に相手を言い負かすということではなく、ひと言で言うと、「正解のない世界に耐える」ということであり、ビター・チョコレートのように苦み走った大人の態度だと。 |
前書きで、~ 本書でお勧めするのは「ホネのある本」を読むことで、「自分と格闘する」ことであり、そのための魔法の呪文などというものはこの世に存在しない。だから本書を読んですぐさま「知的に打たれ強く」なるなどと考えてはいけない。クスリを飲んで翌日から便通が驚くほどよくなるように、本に書かれていることを鵜呑みにして、すぐさま効果を期待するという態度そのものが、「知的に打たれ弱い症候群」の症例のひとつなのである。~ とあります。 これは、ビジネスに置き換えると、よくわかりますよね。答えのない世界でもがき苦しみながら、活動していく「打たれ強い人間」になっていきましょう! (弊社発行 月刊まるやまVoice Vol.13 2011年4月号より抜粋)