泰山北斗(たいざんほくと) Voice Vol.13

「泰山」は、中国山東省にある天下第一といわれた名山です。中国五岳の一つで道教の聖山でもあります。 「北斗」は北斗七星のことです。両者とも人が仰ぎ見るものなので、「泰山北斗」の意味は、人から尊敬される、その道では大家と呼ばれる、素晴らしいことのたとえです。中国の古典「新唐書」に出てくる言葉です。

 

 我々の会社も、我々自身も「泰山北斗」を目指して日々成長していきたいですよね。あこがれられる存在、目標とされる存在、そのためには何か一つでも、他と比較して圧倒的に強い商品、圧倒的に強いノウハウを持てたら良いと思いますが、そう簡単に出来れば苦労はしません。

 私の好きな司馬遼太郎さんの本は日本一読まれて(売れて)いますが、司馬さんの資料集めのエピソードにこんな話があります。それは、司馬さんはネタ探しをするために、古本屋を店ごと、二度も買収したのだと。理由は古本屋が所蔵する膨大な史料の中から何か一つでも、傑作や名作を生む可能性があれば、十分に採算が取れるからだそうです。司馬さんクラスの「泰山北斗」になればそんな芸当も可能です。

 では、どうしたら我々もそんな存在になれるのでしょうか? 先日あるコンサルタントの方とお話しする機会がありました。彼は20年程前に不動産会社を経営しており、バブル崩壊のあおりをまともに受けて、数億円の負債を抱え、夜逃げも出来なければ、自殺しても生命保険金では焼け石に水と、どうすることも出来ない状況になってしまったそうです。思い悩んでいたとき、友人から、無料で聞ける面白いセミナーがあるから来ないかと誘われ、お世話になっているので渋々参加したそうです。

 心ここにあらず、で聞いていると、講師の先生が、「みなさんの会社に何か日本一のことはありますか?」と質問したそうです。会場には80名くらい参加していたそうですが、だれも手が挙がらなかったそうです。 先生は「別に売上高とか、社員数ではなく、もちろん商品でなくても良いです、例えば電話対応が日本一だとか挨拶はすごいよとか、どうですか、何か日本一のことはありませんか?」と聞きなおしたそうです。彼は、自分は無いけど、誰か手を挙げる人がいるのかな?と思って会場を見渡したそうです、でもやはり誰一人として手を上げた人はいなかったとのことでした。

 先生は「皆さんは経営者です。だったら少なくてもこれだけは誰にも負けないということを作らなければ、皆さんも社員さんも自信や誇りが持てないじゃないですか」というようなことを話したそうです。

 彼は、帰り道「うちは何もない、借金しかない、でもその借金だって確かに日本一じゃないし、全然だめだな」と思ったそうです。翌日もそのことが頭から離れず、仕事をしていたときに、「そうだ日本一早起きをする会社、日本一朝早く掃除を始める会社にしよう」と思い、翌日から朝3時に起きて、会社の前から、近くのJRの駅前までたった一人で掃除を始めたそうです。

 紆余曲折があったが結果として会社もつぶれず、不動産の仕事は今息子さんに譲って、今は自らのつらかった体験をベースに中小企業の資金繰りや、事業継承のコンサルタントになったそうです。 今彼の名刺には、「日本一早い朝四時開店のコンサルタント」と入っています。

私は彼の話を聞いて、伝説のコンサルタント一倉定さんの言葉を思い出しました。 それは、「良い会社になるには、経営を安定させるには、人と同じもので秀でるの ではなく、全く違ったもので勝負しないといけない、例えて言うと皆が必要な物では無く、それが世の中に無くても良いものを手がけることだ」とこれはアメリカのマーケティングで言われている、「紫の牛を売れ」と同じ発想ですよね。一部のマニアや好事家から熱狂的に支持され、値段に関係なく指名買いされるようになれば、無駄な競争から逃れ、結果NO1になれるという考え方です。 ビジネスで「泰山北斗」を目指すには、既存の枠組みにとらわれるのではなく、 常に頭を柔軟に新たな発想をする習慣を身につけ、複眼的思考を養いたいものです。  0825

 

(弊社発行 月刊まるやまVoice Vol.13 2011年7月号より抜粋)