抜山蓋世(ばつざんがいせい) Voice Vol.45

抜山蓋世(ばつざんがいせい)」勢いが非常に強く、自信に満ち気力の雄大なさま。力(ちから)は山を抜き、気は世を蓋(おお)う・・・ですから凄いです、勇壮な気質のたとえですね。出展は中国の古典「史記」です。

さて「抜山蓋世」。日本には現在企業が約421万社あります(総務省統計局データより)。となると、421万人の社長がいるわけです。それぞれ、日々会社経営を考え、様々な取り組みをしていることでしょう。会社の規模は社長の器次第で決まるとよく言われます。私も、それは実感します。
 もちろん器の大きさは決まっているわけではなく、日々研鑽し、考え、行動することにより、その大きさは無限大になるのだとも思います。その意味でも自信にあふれ、弱気なことは言わない経営者が会社を大きくし、従業員を成長させていくのだと思います。

私の尊敬する経営者の一人、日本電産創業者の永守重信社長。この方の語られる内容について、感銘を受けることが多く、私のセミナー等でもよくご紹介します。

 

201407-45

ご存知の通り、一見無茶苦茶な経営者のようなイメージですが、それは表面上のことで、しっかりと裏付けられたモーレツさが、ゼロから始めて約40年、2013年3月期に売上高7000億円、連結従業員数約16万人の企業をつくり出した所以だと思います。
昔から、「情熱、熱意、執念」を信条として繰り返し語っており、「知的ハードワーキング」「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」とともに同社の3 大精神になっています。
これだけを聞くと、”熱い”経営者かと思いますが、自分の成功の原因を客観的に分析し、戦略に生かす巧緻さを併せ持っている、ある意味”冷めた”部分のバランスが成功要因なのでしょう。
ポイントはいくつかありますが、技術者出身でありながら技術志向ではない点がそのひとつ。
80年代前半、薄型モーターや産業用ロボットメーカーが革新的な技術を持って、脚光を浴びました。しかし多くのベンチャーが倒産に至っています。素晴しい技術を持っていたのに、なぜ失敗したのか。永守さんは、こう言っています。
 

 「『うちの技術は世界一だから売れる』と思うのが間違いや。僕は1にも2にもマーケティング、セールスつまり販売力が決め手だと思っている。3、 4がなくて5番目に開発、10番目に生産だ」。
いかがでしょう。技術者出身なのに、技術志向とは対極の考え方ですよね。
また、こうも言っていらっしゃいます。「ベンチャー企業は1から10まで開発重視が多い。商品が1つだからピストルのようなものだ。大企業は機関銃だから、ぼやぼやしてれば、たちまちやられちゃう。注文があっての会社だよ」
 とにかく徹底したリアリストとして、ハードワーキングをしており、それは70歳目前の今も全く変わっていません。
「製品を売り込むために1年のうち75%はホテル住まい。海外、国内が半々や。時間的にはざっと半分は販売に割いている。4分の1が人材教育、残りが社長業」と。これは上場したばかりの時に言っていました。
また、「時間は誰でも1日24時間で平等や。生きるために必要な8時間を除いて16時間は働いて、それで駄目なら止めればいい」。これはもちろん、知的ハードワーキング。タイムマネジメントが重要と改めて思います。

 永守さんと言えば、もう一つのキーポイントは、M&Aによる企業再生ですよね。
赤字会社を引き継いで、なぜ黒字にできるのか、と聞かれた永守さんの答えは明快です。
「黒字を出すのは簡単。経営者の熱意と執念さえあればいい。買収した会社の役員もそのままで、リストラなしで黒字化するのがポイントや。どうするかというと、3大精神、これだけ。難しい話は一切しない。まずは会社の中をきれいにせよ。そして休まず来い。この二つしかいいません
 人間の能力の差は多くて3倍、それよりも差が出るのは、モチベーション、やる気だと。 「だって、社員が100人いて90%のやる気であれば、90人の会社と全く同じだ。90人しか働かないのに、100人分の給料を払っていたら、赤字になるもの当然でしょう」と。
難しい経営理論ではなく、こうしてやる気を出させる考え方と行動で、世界規模の会社を作れると証明してくれた永守さん。
 まさに、 「抜山蓋世」な人であると思います。

(弊社発行 月刊まるやまVoice Vol.45   2014年7月号より抜粋)