「射石飲羽(しゃせきいんう)」 精神を集中して事に当たれば、どんな困難なことでも成し遂げることができるということ。「射石」は、矢で石を射る。「飲羽」は、矢の羽までも深く突き刺さること。出典は中国の古典「韓詩外伝」です。
さて「射石飲羽」。ビジネスを成功、そして成長させるためには、自社のサービスを磨くのは勿論、市場(お客様)のニーズと日々の変化を見極める事。そして同様に市場とお客様を見ている、ライバル(競合・同業)の動きや、サービス内容を見ていく事が大切ですよね。大企業にはトヨタとニッサン、セイコーとシチズン、というように明確なライバルが存在しますが、中小企業は明確なライバルを捉えるのは、難しいケースが多いかもしれません。しかしながら、企業成長をさせる以上、つまり、安定経営と若手の人材を増やしていく以上、市場とライバルを研究しつつ、自社のサービスを向上させていく必要があると思います。経営者はそのための時間をつくり、様々な決断をしていくのが仕事ですね!
↑シャトレーゼとは、 |
さて、「射石飲羽」この、意志を持ち目標に向かって集中するとどんな困難でも成し遂げるという事例をと考えていたところ、私が毎月故郷の山梨に行く際に立ち寄る「シャトレーゼ」というお店に着目しました。美味しい和洋菓子が廉価で販売されているので、老若男女だれにでも喜ばれるお土産になるのが特徴のお店です。 さらに最近はワインも販売しているので、ここにくればお土産は事足ります。同社は山梨県創業の会社ですが、全国に450店舗以上ありますので、皆様も利用されたことがあるかもしれません。左のようなワイン色の看板が出ている店舗です。調べてみると、中国や台湾など東南アジアにも複数店舗を出店していますし、今ではワイナリーや、リゾートホテル、そしてゴルフ場の経営もしているそうです。そうなると興味が湧くのが経営者。調べてみるとなんと、高校の大先輩だということがわかりました。う~ん素晴らしい。では齊藤寛社長のプロフィールと経営哲学をご紹介いたします。見逃したのですが、カンブリア宮殿にも出演されていました。 |
齊藤社長は、高校卒業後親戚が経営していた今川焼風お菓子店舗の経営を手伝うことから商売をスタートしました。昭和29年の事です。氏は店舗で待っているだけでなく、イベントなどへ出かけて実演販売をし、アツアツの商品を売るというスタイルを取り、事業を大きくして行きました。しかし、アツアツの今川焼ですから冬は売れますが、甲府盆地の暑い夏は全く売れず、夏に売れる商品をと考えたのが、当時庶民にも売れ始めたアイスクリームでした。氏は研究を重ね美味しい商品を作りますが、大手メーカーの大量生産には勝てずに全く儲からなかったといいます。
安くて美味しくて・・・と考えて、氏がとった戦略は、10円シュークリーム。大手がやらない、やりたくない商品を作り、お客様を増やしていきます。それからは、自社生産にこだわり、素材にこだわり、独自商品を作り上げ、現在は600点余りの商品を提供しています。そのために、製造工程を徹底的に自動化し、コストダウンも図っています。マスコミで取り上げられたこともあり、現在この工場の様子を見たい、と、見学者が後を絶たないそうです。
氏のこだわりは、「売りに行くのではなく買いに来てもらえる商品を作る」そして「自社で商品ストーリーを作る」と言うことです。現在店舗の多くはフランチャイズですが、ロイヤリティを取らずに、共存共栄を図るのも、もう一つのこだわりです。 一方で、全国のショッピングモールやデパ地下からの出店依頼はお断りして、フランチャイズオーナーに利益が落ちる仕組みを作っています。それが本部の利益構造でもあります。現在お菓子部門で460億、ホテルやゴルフ場などを入れると、約600億の年商ですから大手企業と言えると思います。そんな氏の目標は「日本の菓子メーカーが成し得ていない、世界進出」。洋菓子先進国であり農業大国でもあるオランダで農家とネットワークを作り展開を始めました。山梨ブランドが世界ブランドになる日も近いかもしれませんね。楽しみです。 中小企業経営者の皆様、新たな顧客開拓で”貴社のストーリ作り”の |
↑現在80歳を超える齊藤社長(HD社の)ジムで鍛えた体と、事業意欲が若さの秘訣ですね。 |
今回の「射石飲羽」、事例とて斉藤社長の経営に着目しました。村上龍氏が齊藤社長を称して、偉大なる『普通』と番組の最後に言っていました。普通であることは、人に安心と幸福を与える。深い言葉ですね。 最後に氏の経営哲学は「他がやらないことに挑戦」「新規参入は厳しいところから」うーん普通ではないですね!
(弊社発行 月刊まるやまVoice Vol.63 2016年8月号より抜粋)