脩己以敬(しゅうこいけい)」 己を脩めて以って敬す「自分のことはこれで良いと棚に上げずに、常にしっかりと自分を磨いて、謙虚になって他の人に接する。」という意味です。
出展は論語のなかの「憲問」です。論語は512の文章が20編で構成されています。これは、子路という優秀な弟子から「立派な人間とはどんな人ですか?」と尋ねられた時、孔子が答えたものです。
  ちなみに、己(おのれ)という字は、人から呼ばれて、はっと起立する者の姿を現したもので、脩と言う字は自分の足りないものを滑らかに整える。という意味からできた文字だそうです。

  昨年、長崎に行く機会がありました。長崎は歴史のある街で見所満載ですが、その中でも私が楽しみにしていた一つが、孔子廟でした。今、弊社のフェイスブックでは、ビジネスに役立つ情報発信を短い文章で毎日行っておりますが、その一つが論語の発信です。論語は今から2500年も前の中国(春秋戦国時代)にいた孔子とその高弟たちの教えを弟子たちがまとめたものですが、学べば学ぶほど、人格形成とマネジメントの二つの軸がしっかりと書かれており、時代を問わず人々の指針を明確にしてくれるものだと感じます。
だからこそ、こんなにも長い間継承されてきたのです。孔子廟とは、その孔子を祀ったものでもちろん中国が本家本元ですが、日本でも孔子の教えを学ぼうと、儒学の学校に付随して江戸時代に湯島や足利、岡山、佐賀、などに建立されました。ただ、これらの建築様式は日本式であり、唯一長崎にある孔子廟だけは、明治期に建てられたということもあり中国廟宇なのです。この建立には当時の清国政府と在日華僑が協力したそうで、同時に小学校も併設し多くの子供たちの教育の場としても100年の歴史を数えたそうです。

 

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孔子廟は長崎の中心部にあるので、高台から見るとオレンジ色の瓦がとても目立ちます。現在は歴史博物館として公開されていますので、入館してきました。まずは左にある儀門に圧倒されます。そして中に入ると本殿がありますが、周りにある石像にも圧倒されます。

 ↑儀門(ぎもん)。真ん中は神さまと皇帝以外の通行を禁じて

平常は閉ざされているという神聖な門

 

 

さて、「脩己以敬」 我々経営者は、自分たちが会社を引っ張っているという自負がありますので、ついつい社員や部下に、「教えてあげる」というスタンスを取ってしまいます。もちろんリーダーシップは必要ですが、自分の不得手な事、足りない事を素直に自覚して、メンバーを動かすように心がけたいものです。

人を動かすには、敬意によるモチベートがあると思います。あんなにできる社長が謙虚に物事に取り組んでいるんだ!という様子をみれば、必ずや部下は動いてくれると思います。

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                                                                                      ↑本殿。まわりには、孔子の72賢人の石像があります。すべて中国から運んだそうです。

 

  長崎には歴史を学びに来ましたが、それにしても2500年も前に孔子が生まれ、孔子を慕って多くの弟子たちが学び、その言葉や行動が現代にも連綿と残っているという凄さを改めて感じました。それはまさしく孔子自身が答えた、賢者というものを自ら実践したからではないでしょうか。「脩己以敬」社員を、部下を動かすには、まさにこの姿勢が必要だと思います。そしてそれと似た意味で、現代の経営者に必要な資質として、私も実感し、セミナー等でお話しすることに、チャームという言葉があります。要するに魅力的だということ。「あの人には素晴らしいところはもちろん、そうでないところもあるけど、でもあの人のためなら頑張りたい」と思われる魅力的な人間になれれば、会社や組織は回っていくのではないでしょうか!「脩己以敬」そして「チャーミング」この二つを意識し、実践していきましょう。

 

(弊社発行 月刊まるやまVoice Vol.32 2013年5月号より抜粋)