曰思無邪。思い邪なし(おもいよこしまなし)、これは論語の為政にある言葉です。意味は「偽り飾るところがない。少しも邪悪な考えがない。」と言うことですね。

 

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私の読書好きはつとに知られているようで、自分自身も常に2~3冊は常備していますが、お客様から頂くことも多いです。もちろん、頂いた書籍については感想文を添えて、お礼状をお送りしていますが、新たな出会いを作って頂き本当に感謝しております。皆様いつもありがとうございます。

 

さて、今回は著者直筆で「思い邪無し」という言葉が入った本をいただきました。実はこれは、もう10年以上のお付き合いになる、夢工房だいあん(株)の光田敏昭代表からの献本です。そして書いてくださったのは、著書の神渡良平先生です。神渡先生とは、光田代表を通じて何度もお会いしています。ご存知の方も多いかと存じますが、先生は会社員をされていた38歳の時に、脳こうそくで倒れ、長い闘病生活のあと、活かされた命で何をしていくかと考えた時、市井で活躍されている方を世の中に知らしめたいと作家になられました。

 

先生はその後、沢山の経営者や活躍されている方々を直接取材をしながら、その実像を活き活きと書物にされており、私もファンの一人で、お勧めの作家先生です。

 

【思いの経営 神渡良平著】

頂いた本に記載してあることが、経営者には本当に欠かせない、そして読むべき!と思いましたので、ご紹介させていただきます。

 

千葉にある美容室「オオクシ」の経営者が、先代から譲り受けた1店舗の理容室を2018年10月現在理容と美容の複数の業態で50店まで成長させた実話を神渡良平先生が書き下ろしたドキュメンタリーです。労働集約型の美容院という事業を、自分の会社を大きくしたいというだけでなく美容業界を大きくしたいという思いで取り組んだ結果、お客様はもちろん、社員からも、そして地域からも必要とされる店になるまでの社長の「思い」。文字にすると簡単な言葉ですが、その道程は平たんではありません。社長自身の変革も含め、いくつかのターニングポイントをどのようにつかむかが、率直に描かれています。まさに思い邪なしです。

 

私もコンサルティングの際によくお伝えしているのですが、一つは「経営=会社をどうしていきたいか、社員をどのように育てたいか、お客様にどのような付加価値を提供するのか」を日々実践していった結果、地元千葉はもとより、全国から、また、業種を超えて会社の経営力やサービスについて表彰される結果を引き寄せたこと。

 

もう一つは、「アクションプラン=具体的に計画を立て、PDCAを回していくこと」今更、というくらいに当たり前ではありますが、東日本大震災に見舞われたときの、一生に一回あるかないかの決断をどのようにしたのか、などが書籍に詳細に書かれています。経営者にとって、この大串社長のアクションは必ず参考になると思います。
そして、書籍のテーマの「思い」の強さが経営の基礎、原点になるということが深く理解できると思います。

 

書籍の中から、私が好きな箇所を一部抜粋させていただきます。
ギリシャの哲学者ソクラテスの話、『人生は良いことと悪いことしかない。たいていの人は、「良いことがあったら喜び、悪いことがあったら悲しむ」これを繰り返す人生を生きている。ところがほんのわずかの一部の人だけがそうではない人生を生きている。彼らは良いことがあったときには人と感謝し、悪いことがあったときはそこから何を学べるかを考える。そうすれば良いことと悪いことの繰り返しの人生から、感謝と学びだけの良い人生に代わる』

 

これは、まさに私がコンサルティングをしている会社の社長様たちとよく話すことです。
今回の書籍の主人公である大串社長は、同じくソクラテスの名言からもう一つ紹介されています。『運がいい人も運が悪い人もいない。運がいいと思う人と運が悪いと思う人がいるだけだ』これもまたなるほど、と思います。思い込みは人間を縛ってしまうんですね。これを受け、神渡さんはこのように結んでいます。「まさに、人生の先輩からの的確な助言です。これを杖として難関を乗り越えていけるでしょう。職場が学びの場でもある、というのはいいものです」と。

 

先輩経営者の軌跡は本当に参考になることが多いですが、これも著者である神渡さんがご自身の「思い」に基づき取材し、70歳を超えた今でも、精力的に執筆活動をされているからですね。様々な方とのご縁に感謝の思いで一杯です。

(弊社発行 月刊まるやまVoice Vol.88  2018年10月号より抜粋)