「君子豹変(くんしひょうへん)」 君子はここぞという時、豹の毛が生え変わるように鮮やかに変身するという意味です。みなさまもよくご存じだと思います。
出展は中国の古典『易経』に出てくる言葉です。
さて、「君子豹変」 みなさま、どのようなイメージをお持ちですか?マイナスのイメージがありませんか?
「あの人は態度が豹変した」など、一般的にも、また統計を取ってみても、プラスのイメージより、マイナスのイメージが多いようです。しかし、これは本来の意味がきちんと伝わっていないからなのですね。
「君子」は「聖人君子」という熟語があるというように「学識、人格ともに優れた徳の高い人」という意味です。一方、「豹変」の本来の意味は、野生の豹の毛は秋になると毛根から一気に抜け変って、鮮やかな豹がら模様を作る事を言います。ですので、「君子豹変」の意味は上記のように、肯定的な意味で変化する事を言うのです。
「新英和大辞典」(研究社)には、君子豹変の英訳も出ていて、そこには「A wise man changes his mind a fool Never.」と書かれています。これこそが真の意味ではないでしょうか。 『易経』のその部分がどう書いてあるか、きちんと調べてみると、「君子は豹変す。小人は面を革(あらた)む」とあり徳のある君子はすばやくはっきりと過ちを正すが、凡人は外面だけを改めるということがわかります。論語の「過ちては改まるに憚ること勿れ」と相通じるものがありますよね。
私が以前読んだ宮本武蔵の話が事例として面白いので紹介します。 吉川英治著作の「宮本武蔵」に登場する、若き宮本武蔵(当時は「たけぞう」と呼ばれてていた)は、相当な乱暴者でした。あるとき乱暴が過ぎて沢庵和尚に叱られ、村の千本杉につるされてしまったそうです。 しかしそんな乱暴者の武蔵のことを住職の沢庵は見込みがあると思っていました。つまり武蔵の内面に秘めたものを見抜いていたのですね。 だから、その部分を磨いてやれば立派な武士になれると確信していたのですね。 |
その後も、和尚は乱暴者の武蔵を気にかけていたのですが、ついに手に負えなくなり、姫路城の一室に武蔵を閉じ込めてしまいます。そしてそれから約三年の間城から一歩もださずに、城の書庫にある本を全部読ませることにしました。 読書に疲れたときには、座禅をさせ、瞑想をさせながら、心を鍛錬する指導をしたそうです。もともと、武芸には秀でていた武蔵が、この三年間で精神面も成長し、晴れて和尚に許されて城を出てきたとき、たけぞうから、立派な「宮本武蔵」に変わっていた。 ということでした。 いかがでしょう!これこそが、武蔵(たけぞう)青年が宮本武蔵に「豹変」した瞬間だと思いませんか。
「君子豹変」 新しい年、我々も、過去の成功体験、先入観を捨てて、豹変してみようではありませんか。
ダーウィンも言っています。「生き残るのは、強いものではなく、変化し続けるものだ」と。君子になるには、まだまだ積み重ねが必要だと思いますが、豹変は考え方次第でできるもの、どんどん変化してみましょう。
そして会社も豹変させ、職場も豹変させ、次のステージに進みましょう。
(弊社発行 月刊まるやまVoice Vol.17 2012年1月号より抜粋)