沃野千里(よくやせんり)」土地の肥えた原野が、広々と続いていること。広大に開けた肥沃な平野のことですが、ビジネスでいうとブルーオーシャンですかね。出典は中国の古典「戦国策」です。

 

さて「沃野千里」。今皆様がビジネスをしている業界は、多くのチャンスに恵まれた成長分野でしょうか?
それとも、競争が激化しマーケットも縮小してきている、厳しい分野でしょうか?
もちろん、そんな単純な分け方ではないと思いますが、良くも悪くも日々刻々変化しているのは事実ですし、それに対応できるよう、経営資源を使い、戦略を立てて行かなければ生き残れないのも事実だと思います。私も、職業柄多くの書物に触れますが、戦略に関して基本的なベースとなる本は、「マイケル・ポーターの競争戦略」です。これを折に触れて読み直しています(ちなみに読んでいるのはエッセンシャル版です)。

 

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↑マイケルポーター博士
ポーターのプロフィールですが、幼少の頃は軍人の父親と世界各地を渡り歩いて育ち、高校から大学はアメリカに戻っています。勉強ができたのはもちろんです が、高校時代はアメフト・野球で州の代表になり、大学時代はゴルフで全米代表チームに選ばれるほど運動能力もあったそうです。私はこの文武両道の部分にも 大きく惹かれています。
ではなぜ経営論を学び、経営戦略の大家としての地位を築いたかですが、これは彼の子供のころからの単純な疑問がベースになっているのです。それは、「なぜ同じようなお店で繁盛店とそうでない店があるのか?」「同じ業界でも収益が上がっている会社とそうでない会社があるのか?」「それは経営者が考えていることや、やっていることが違うからなのか?」ということでした。
大学院に入り、それを本格的に研究してみるうちに、「戦略立案」という考え方にたどり着いたようです。

 

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↑競争戦略エッセンシャル版

 

ところで「沃野千里」。 私の解釈は、戦略をしっかりと立て、それをきちんと実行していくことで、今自分がビジネ スをしている分野にそれを見つける事だと考えます。会社経営は景気とは無関係で、景気が良くても倒産する会社はありますし、厳しくても収益を上げる会社も 存在します。その違いは、やはり「戦略立案」ではないでしょうか。この本のポイントは、競争をあおるのではなく、いくつかの視点を持ちながら、抜け漏れな く、自社の価値を高めるために戦略を立てましょう、ということです。例えば、ポーターと言えばまずは、「5フォース」=5つの競争要因が有名ですが、これ は業界が魅力的か否かを判断することではなく、業界の業績と自社の業績について理解するために用いなさいと説いています。そして競争に勝つには、「最高を 目指す」というのは誤解で、それはゼロサム競争をあおってしまうと。取り組むべきことは、独自性を目指すのだということ。結果それが、卓越した業績を持続 させることになることに繋がるということです。    

 

 

結論として、「競争戦略」という言葉は、競合他社を負かすために使われる武器と考える人が多いと思いますが、ポーターの言う「競争戦略」は価値創造に関わることであり、それを競合企業とは異なるやり方で行う方法を考える、ということです。具体的には、他社とは異なるバリューチェーンをいかに構築し、業界平均を上回る業績を確保するかということにフォーカスすることです。結果として、それが競争優位に繋がり、お客様から選ばれる企業となるわけです。

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いかがでしょう。今回の「沃野千里」。 ポーターの競争戦略をご紹介しながら、自社におけるブルーオーシャンを考えるヒントにしていただければと思います。企業の存在理由と存在価値は、お客様から選ばれること。 そのためには、お客様に独自の価値提案をすることにつきると思います。右手にロマン、左手にソロバンを持って楽しく戦略を考えてみようではありませんか。

 

(弊社発行 月刊まるやまVoice Vol.43 2014年5月号より抜粋)