「楚材晋用」中国古典『春秋左氏伝』にでてくる言葉です。優秀な人材が流出し、他国で重用されること。「楚」と「晋」は、ご存知のとおり中国春秋時代のライバル国楚は刑罰の乱用が多くて人材が流失し、逆に「晋」ではその人材を用いて活用し、結果として「祖」を悩ませたそうです。

わが故郷(甲斐の国)で有名な武将といえば、「武田信玄」 彼の戦術は旗印にもある「風林火山」が有名です。
 これは、孫子の言葉の引用で、「其疾如風 其徐如林 侵掠如火 不動如山」の頭文字を取っています。
意味は「その疾(はや)きこと風の如く、その徐(しず)かなること林の如く、侵(おか)し掠(かす)めること火の如く、動かざること山の如し」という部下にもわかりやすい戦術論になっていると思います。
しかし、私がそれ以上に凄いと思うのが、人材について語ったこの名言です。

人は城、人は石垣、人は堀。情けは味方、仇は敵なり」
この意味は「どれだけ城を堅固にしても、人の心が離れてしまったら世を治めることはできない。情けは人をつなぎとめ、結果として国を栄えさせるが、仇を増やせば国は滅びる」

まさに楚材晋用。 人材活用の重要性をしっかとり認識しています。

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↑信玄公が祭られている 恵林寺です

さて、楚材晋用、これは当然現在の企業経営でも同様だと思います。
「優秀な人材に来て欲しい、優秀な人材に長く働いてもらいたい」。これは経営者として偽らざる気持ちではないでしょうか!

最近は多くの企業の人材活用で重視されている「リテンション」という考え方、これは、金銭的報酬ではなく、それ以外の報酬や働き方の提供で、会社に長く勤務してもらうためにどんなことができるかということです。
 では、どんな報酬があるのか?実はそれを知る最短の方法として効果的なのは、「退職者に聞く」という手法です。具体的には、退職希望者との面接の場を設け「会社を辞めるにあたって、わが社が変化できそうなことや、変化するとより生産性が高まりそうなことをあなたの視点から、率直に教えてもらえませんか?」
「また、もしあなたの事情が将来変わって、わが社で働くことが可能になった場合、どういう点が変化していたら、再入社したいと思われる可能性が上がりますか?」と聞くのです。
 退職者の声を聞くのは耳が痛い作業になるとおもいますし、感情的なことがあると素直に聞けない状況もあると思いますが、(その場合は社長ではなく、なるべく話しやすい総務部などの人材に担当させて)自社を良くするリテンションのためだと思い、ぜひ実行してみる必要があると思います。

 

 (弊社発行 月刊まるやまVoice Vol.7 2010年12月号より抜粋)