実践躬行(じっせんきゅうこう) Voice Vol.57

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「実践躬行(じっせんきゅうこう)」 身を持って実際に行うこと。
理論や心情を自ら進んで行為に現していくこと。「躬」は自分でという意味。
口先だけではいけない、まず行動せよということですね。

 

 さて「実践躬行」。今回は2015年12月にスウェーデンで授賞式が行われたノーベル賞の話題です。この年は日本人2人が受賞されました。大村先生、梶田先生は共に地方の国立大学出身ということが、クローズアップされていますが、今回は、医学生理学賞を受賞された大村智先生(北里大学特別栄誉教授)を取り上げさせてもらいます。

 

 大村先生を取り上げる理由は、ご想像通り私と同郷=山梨県出身だからです(笑)が、無論それだけでなく、先生のプロフィールがこれだけ凄い研究者としてはとてもユニークだという点があるからです。
報道等でご存知の方も多いと思いますが、以下簡単にまとめてみますと、八ヶ岳の麓の農家で生まれ家の手伝いをしてあまり勉強もしない・できない学校時代をおくっています。高校生の時には勉強ではなく、スキーに熱中し、結果山梨代表の選手として国体にも出場しています。将来は学校の先生になろうと地元山梨大学に入学しますが、山梨では教員の採用がなく、卒業後は東京都の教員として採用され、都立墨田工業高校の定時制の教諭として5年間の教員生活を送っています。その時、働きながら学ぶ学生に刺激を受け、自らも学びなおそうと昼間東京理科大の大学院に通い修士課程を修了し、そこから28才で文部教官として採用され山梨大学の工学部の助手として研究生活をスタートさせました。

 

 

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韮崎市内にある美術館と温泉施設。
眺めも抜群です。

 

 

 

ここからは、研究者大村先生ではなく、地域社会への還元に関してご紹介します。報道にあるように、先生は地元山梨で美術館や温泉施設を作っています。特許収入を地域に還元したいという思いからスタートしていますが、素晴らしいのは美術館を寄贈する前に、1年間自分で運営して、どのくらい経費が必要かを計算してから、韮崎市に寄付していることです。
理由は、「自分は良いと思っても、相手は迷惑な事もあるので、経営の数値を出して、運営に負担の無い体制を作ってから、と考えた」と科学者というより経営者としての発想ですよね。
温泉はもちろん、地域の憩いの場を提供するということ。そして女子美術大学の理事長を務めた際には、ご自身の名前ではなく奥様の名前を付けた「大村文子基金」をつくり、その基金で毎年1名ずつパリとミラノに留学生を送っているそうです。
先生の好きな言葉に「眺望は人を養う」があり、山梨からの展望そして、海外で見える景色が、教育と人間形成には大切だと実践しているのです。

 

 今回は、「実践躬行」から、大村先生の記事に強引に結び付けましたが、ネットで大村先生の写真を探していたところ、偶然にも大村先生ご自身が揮毫された、「実践躬行」を掲げた絵が見つかりました。私も先見の明があります(笑)。
 大村先生は幼少の頃より、祖母に「一番大事なことは、人のためになることだ」と言われ続けて育ったそうです。その時は何が出来るか想像もつかなかったそうですが、結果として微生物の研究をすることになり、アベルメクチンの発見イベルメクチンの開発をされ、それが世界中の多くの風土病の特効薬として役に立つことに繋がったことが、大変うれしい事だとおっしゃってますね。私は研究ももちろんですが、経営者としての側面、地域社会への貢献、そしてなによりも人材育成者としての実績など、多方面にわたり、偉大な実績を残されているのが素晴らしいと思います。人材育成では、大村門下から排出した教授は31人だそうです。これは公平にチャンスを与え、意欲を見せる人材には支援を惜しまずフォローした成果ですね。
 我々経営者も分野が違いますが、会社の業績を上げ、社会貢献をし、人材を育てるという基本を着実に忠実にそして「実践躬行」していこうではありませんか。

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↑実践躬行を色紙を掲げる先生

 

(弊社発行 月刊まるやまVoice Vol.57  2015年12月号より抜粋)