堅忍不抜(けんにんふばつ) Voice Vol.61

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「堅忍不抜(けんにんふばつ)」 意志が固く、つらいことでもじっと耐え忍んで心を動かさないこと。「堅忍」は意志が固く、我慢強いこと。「不抜」は固くて抜けないこと、転じて意志や計画がしっかりしていて、ぐらつかない意。出典は「蘇軾(そしょく)」の言葉からです。

 

さて「堅忍不抜」。ビジネスを継続・発展させていくには様々な取り組みが必要ですが、その根底にあるのは経営者 の揺るがない想い、決してあきらめない強い意志、そして目標に向かって進むための経営計画ではないでしょうか。  今回ご紹介する会社さんは、「株式会社埼玉種畜牧場」通称「サイボク」さんです。先月の「中央タクシー」さんに続き 「日本でいちばん大切にしたい会社」に掲載されている会社さんです。先般埼玉県日高市にある、同社の本社でもあり、一大テーマパークになっている「サイボクファーム」に行ってきました。理想を追求した素晴らしい街だと思います。

サイボク創業者の笹崎龍雄氏は、大正5年(1916年)長野県生まれです。この時代日本の男性はほぼ皆が、徴兵されていますが、氏も同様戦場に赴きます。今の東京農工大卒業の獣医という立場を見込まれ、満州で軍馬の世話をさせられ、戦争末期にはフィリピン配備され、死線をさまよったとのこと、多くの戦友が亡くなったこの戦争で敗因は「物量」「食糧」の不足だと痛感しました。そして生き残った自分にできることは、日本人の食生活を向上させるというより、食糧不足を解消するために、自分の専門分野である、動物性蛋白質の増産を考えたそうです。しかし、当時日本を統治していたGHQは、日本軍の将校は公職追放ということで、仕事に付けず、知人のつてをたどり、埼玉県の丘陵地帯の開拓からスタートしました。

当初は、牛、豚、鶏すべての飼育を始めましたが、獣医としてそしてタンパク質の研究家として、「コメを主食とする日本人にとり、健康と体力増強のみならず、頭脳の回転を良くするためにも、栄養学的な観点からも、豚肉が必要だ」と、世の中の需要と利益を考えれば、本来牛と鶏なのですが、豚だけで、やるべきだと意思決定します。もっとも決定するのは簡単ですが、事業として進めていくには困難が待っています。しかし「堅忍不抜」の想いを形にし、やり続けることで、現在の形が出来てきたと思います。現在サイボクファームは「買い物空間」と「体感空間」の大きく二つに分かれていて、特に特徴的なのが、温泉やアスレチック陶芸など9つのエリアです。子供からお年寄りまで、家族全員が一日楽しめる場所です。「農業のディズニーランド」と言われている所以ですね。

そもそも養豚業に特化して、生産、製造を生業とした同社が、自社でこの空間を作ったのは、氏がいつも考えていた「食と言う字は人に良いと書く。この文字が示すように、人に良いもの、つまり、美味しい、安心、安全、新鮮、本物であれば、食料品店は地域の人が育ててくれるはず」という想いを実践するためです。そしてそのノウハウを小売店に伝え、業界の成長に繋げたのです。獣医でもあった氏は、良質の肉豚を作良するには、DNA60%、資料の改善30%、そして飼育環境10%ということを発見し、昭和30年代に、アメリカやヨーロッパから、良質な肉豚を輸入しました。今では逆にヨーロッパから同社に、その育成方法を学びに来るそうです。

また、氏の著書によると「豚ほど体質が人間に近い動物はいない。豚の内臓を顕微鏡で見ると、人間とほとんど組織細胞が同じである。なので肝臓が弱ったら豚のレバー、胃腸が弱ったら豚のモツ、母乳が出にくい時はコラーゲンたっぷりの豚足を食べると良い」そうです。まとめると、豚と人間は組織学的に、そして生理学的に共通項が沢山あり、例えば臓器の大きさ、血圧、雑食性であるが故の消化吸収の整理、目の構造などだそうです。

獣医でもある氏は、豚を商品ではなく、人間の暮らしをそして自分の人生を助けてくれる仲間として、供養塔をたて、日々感謝をしています。自らを豚竜と名乗り歌を詠み、仲間を豚児と呼びこの気持ちを伝えていました。

 

↑創業者の坂崎龍雄氏とその著書です。

今回のサイボクさんの話を書いてみると、改めてどんな産業、どんな業種であれ、強い信念を持って行動し、きちんと経営計画を立てて進んで行ければ、必ず想いは実現するということがわかります。「堅忍不抜」ぜひ我々も氏の何分の一かもしれませんが、強い想いを持って行動して行きましょう!

 

(弊社発行 月刊まるやまVoice Vol.61  2016年5月号より抜粋)